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社長のコラム しゃコラ



社長のコラム、通称“しゃコラ”
現実とデジャヴの境 2007/05/31

この景色ってどこかで見たことがある。この会話って前にどこかでかわした覚えがある。夢ではない不思議な感覚を覚える瞬間が、誰にでもあるもの。そんなデジャヴ(既視感)をミステリアスでスリルたっぷりに体感させてくれる作品をご紹介。デビューシングル「Grace Kelly(グレース・ケリー)」が、全英シングル・チャート5週連続1位になったMIKA(ミーカ)のデビューアルバムである。新しモノ好きの音楽ファンは要チェック。MIKAは、英BBCが選ぶ2007年の注目アーティスト第1位に輝いた男性シンガー。デビューアルバムも、全英チャート初登場1位を獲得した注目作品です。(日本盤のアルバム発売は2007年6月20日予定)

『ライフ・イン・カートゥーン・モーション』と題されたこのアルバムの中には、ミラクル・ハッピー・ヴォイスでリアリティーに満ちたオリジナル曲を歌う、等身大のMIKAがいる。メロディーから歌声、ビジュアルまで背景は時としてデジャヴな時空間を超え、妙に不思議な感覚を覚える。等身大でいながらとっぴな人物像、軽妙でとぼけた作風、ある時はフレディー・マーキュリーやプリンス、ある時はベン・フォールズ・ファイヴ、ジェイミー・カラム、またある時はギルバート・オサリバンにジョージ・マイケル。またまたある時はEW&F、ロビー・ウィリアムス、ルーファス・ウェインライト、シザー・シスターズ・・・てな感じて、私は全13曲(クレジットにない13曲目含む)、何も手に取らず、何でもありの彼の歌に聴き入ってしまった。それらはすべて、謎解きの伏線であり、現実とデジャヴを結びつける一つ一つの点だ。

アップテンポなナンバーでは独白めいたヴォーカルが聴き取りにくい、などといったファースト・アルバムらしい問題点はあるものの、都市の贓物を引きずり出したような彼の詩は、かなり臨場感を持って聴き手に迫ってくる。
大胆なバックコーラスや大掛かりな楽器構成やアレンジも迫力に満ちている。落ち着いたパフォーマンスは神秘的な物語により輝きを持たせる。甘いマスクとは裏腹に、しぼり出されるその歌声は聴く者の心のヒダをかきむしり、恋心を刺激する。事実彼が作り出すラブソング、とくに微妙な恋の駆け引きを綴った「Happy Ending(ハッピー・エンディング)」は隠れた名曲だ。耳にしたとたん、いつのまにかリフレイン状態になる。それだけ詩にもメロディにも、リアルな説得力があるということだ。

現時点では「戦争真っ只中のレバノンの首都・ベイルートに生まれた・・・」で始まる彼のプロフィールばかりが話題になっているが、自己否定も肯定もせず、ひたすらありのままの情景を描写した彼の歌は、どんなに詳しいバイオグラフィーよりも雄弁だ。
しかし、どこかで聴いたことがあるような曲のオンパレードなのに、終盤に近づくにつれて、聴いている方もなんだか現実とデジャヴの境が薄れていく。今はどちらの世界を聴いているのかと、混乱も生じる。だがそれが心地よくもあり、この作品の魅力かもしれない。
それは本当に不思議な気分だった。私はまるで自分自身をからかうような、気まぐれな記憶とでも言うべき、過去の残響を眼にしているような気分だった。
ともかく、良くも悪くも2007年のアルバムであります。

画像

Life In Cartoon Motion / MIKA


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