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社長のコラム しゃコラ



社長のコラム、通称“しゃコラ”
夢をかなえるゾウ 2008/04/03

大抵の本は退屈である。半分ぐらいまで読んだあたりで眠気がさし、残りの厚さがうらめしくなることが多い。ところが、たまに、ごくたまに、読み終わるのが惜しい、このままいつまでも読んでいたいと思う本に出会うことがある。そんな至福を味わうことがあるので、読書ってやつはなかなかやめられないのかもしれない。

『 夢をかなえるゾウ (水野敬也/著) 飛鳥新社 』

精神的な豊かさも、物質的な豊かさも、すべての成功には決して偶然などはない。ちゃんと成功するだけの「理由」がある。そして、その「理由」とは・・・・。
よくある自己啓発本というか意識改革本とでもいうか、でも私はあえてその辺は捨てて、「マインドエステ・エンターテイメント・ファンタジー小説」とでも紹介したい。たとえば、関西弁のドラえもんがのび太を相手に漫才でおまじないをしてるよーな感じというか、さんまの筋金入りの妄想テクニックに所ジョージのゆるさをプラスして、素直な電車男に説教してるよーな感じというか・・・。
とにかく設定はめちゃくちゃだが、ゾウの姿をしたうさんくさいガネーシャ(自称:神様)の次から次に出てくる課題をこなそうとするどこにでもいそうな主人公(サラリーマン)に妙なリアリティーがあり、面白すぎてついニャっと顔が緩んでしまうこと間違いなし!

リンカーン、ニュートン、ロックフェラー、本田宗一郎、松下幸之助、ビル・ゲイツ、イチローなどの歴史上の人物や現代の成功者たちもガネーシャは自分が育て導いたと主人公を強引に諭す。そんな成功者たちもこなしたとされる課題は、どれもシンプルで決して抽象論ではなく、人生をまっとうするのに必要な具体的な提案だ。むしろ何事もとらえ方次第であって、特別なものなど何もない。
主人公もそんな偉大な成功者と同じような課題をこなしていくうちにガネーシャの゛人は楽しいことしかできない゛という教えの大切さに気づいていく。
ストーリーはとりたててドラマチックでないものの、時折ハッとするような視覚的なシーンや印象的なフレーズが出てきて、心をグッとつかまれる。
そして行かなければいけないガネーシャと成長した主人公との別れのラスト・・・。
著者の言語センスが生きているのだろうか、そのころには不思議な吸引力のあるストーリーにだんだん泣けてくるから不思議だ。

「成功したい」「変わりたい」漠然と欲する主人公の願い・・・。
それを叶えるため一見、ごちゃごちゃしててわずらわしく思えたガネーシャの教え・・・。
欲するということは、人が生きている証だ。何も欲しいものがなくなったら、私たちはただ毎日食べて寝るだけの抜け殻のようになってしまう。地位、名誉、お金、あるいは、愛情、生きがい・・・、そして夢。
人それぞれに求めるものは異なるとしても、欲しいものがあるからこそ人間は生きていくことができる。だがそれにしても、欲するものが手に入らないというもどかしさは、何と狂おしく私たちを突き動かすことだろう。
本書で描かれている主人公はそんな狂おしい渦にのみ込まれていて、それゆえに必死の形相で走り続けなければならないような、人間臭い弱さをも漂わせる。
しかし主人公は最後に成功だけが人生ではないことに気づき、誰かに教えてもらうのではなく、自らが身をもって体験していくことの大切さを確信するのだ。

この小説の文章には独特の流れるようなリズム感があって、最初はなんだか車酔いみたいな気分だったが、それが次第に快感に変わり、読み終わるとすぐまた最初から読み直したくなった。
今を生きることに力を添える文章が、忘れがたい出会いをもたらす一冊。
今年TVドラマ化が決定しているらしいが、小説を読んでこんなにすがすがしい気分を味わったのはひさしぶりだ。

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夢をかなえるゾウ / 水野 敬也 


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