(乾)呉乾物株式会社 image
会社案内
企業ビジョン
CSR活動

社長のコラム しゃコラ



社長のコラム、通称“しゃコラ”
ニッポンの食卓 2008/04/24

仕事中や、運転中など、ふとつぶやきをもらしてしまう、なんてことがよくある。たとえば「あーあー」とか「えーっ」というネガティブなセリフが突然、無意識に唇からこぼれ落ちてしまうのだ。これはそばにいる人だけじゃなく、何よりも自分を不快にしてしまうので、近頃ではこの発作を軽く下唇をかむことで防止している。日常生活からため息と愚痴を排除することに決めたのだ。

中国産毒入りギョーザ事件以来、中国産のみならず、あらゆる食に対して不信感はぬぐえないものの、毎日の生活から冷凍食品に代表される輸入食品を排除するなんて「絶対ムリ!」の声は依然多い。
一方で、お店に行けばいつでも豊富な食品が並んでいる現在の生活からは実感しにくいことなのかもしれないが、世界の食糧事情を考えると、今はすぐに買えるこれらの輸入食品が、そのうち手に入らなくなる事態もそう遠くはないかもしれない。
輸入食品なしではもはや成立しないニッポンの食卓。世界最大の食糧輸入大国ニッポン。
ミシュランガイドに狂乱するニッポンの今夜のおかずはいったいどうなるのだろう?

すでに時計の針を逆回転できないところまで、われわれの食生活は激変してしまった。安い海外の食材があることを前提に家計が成り立ち、冷凍食品や手間のかからない食べ物があることを前提に日々の生活スタイルが成り立っている。そこまで中国産をはじめとする輸入食品はニッポンの食卓に浸透してしまったのだ。裏返せばそれだけ私たちニッポン人は、食にかける時間と手間を海外に依存していることになる。このまま「安いもの」「手間のかからないもの」に頼りすぎるのは考えものだ。
企業だけでなく家庭でも食のアウトソーシングが進み、「食の五無」が指摘されている。それは国産品の減少、地域色、季節感、安全性、家庭の団らんの喪失だ。
生活スタイルがこれほどまでに変わってしまった現状では、簡単に食生活を改善することはまず不可能に近い。でも、果たしてそれでいいのだろうか・・・。ニッポン人はこの機会にじっくり考え直すべきではないか・・・。

経済至上主義の中で環境に大きな負担を与え、また個食、欠食、偏食等で乱れた現在のニッポンの食卓を見直して健全なものとするために、効率優先の工業化社会に歯止めをかけ、ニッポン人は食生活に対してもっと謙虚になるべきではないか。そのきっかけは『ごはん』を中心とした日本型食生活の回復にあると考えたい。これは「昔に戻ろう」ということではなく、ニッポンの食文化の良いところを今に活かそうということです。
かつてのニッポンの食卓では、国内で採れた食材を使った日本食が食べられていましたが、このような食事は、輸入食品を多く用いる洋食よりも当然環境にも良いといえます。
『和食』という言葉を見たり聞いたりすると、なつかしく、なんだか心がホッとしませんか。まな板で野菜を刻む音、鍋から立ち上がる湯気、ヌカからきゅうりを取り出す時の匂い、網で魚を焼く時の煙り・・・などなど。
家庭で心をこめた料理、『手作りの味』が「これだっ!」と思い当たる人も多いと思います。海外旅行で『故郷の味』がなつかしくなり、ニッポン人なら誰だっておにぎりやみそ汁や漬け物、そして納豆、梅干しなどが食べたくなったりするものです。
これこそニッポン人としての「DNA」がくすぐられた瞬間で、未来に向けた解決策を探るキッカケかもしれません。

世界でもっとも食の安全にうるさい国ニッポン。でも、安さばかりを追い求めれば安全は最初に犠牲になる。
喉もと過ぎれば゛毒゛も忘れる・・・、となってまた安易な輸入食品に戻るのか。
それとも毒入りギョーザをきっかけに、思い切って海外頼みの現状から脱するのか。
バイオ燃料ブームで穀物などの食糧争奪戦が加速する中、世界中から食をかき集めるニッポンのやり方はグローバル化する食の現状からすると当然無理があるのは明らかだ。これから少しずつでも日々の食卓を見直していく努力をすれば、必ず安全なニッポンの食卓は取り戻せるはずだ。
将来のニッポンの食卓がどのように再生されていくのか、私は軽く下唇をかみつつ見つめていきたい。


しゃコラのトップへ >>