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社長のコラム しゃコラ



社長のコラム、通称“しゃコラ”
気をつけ、礼。 2008/11/01

今思えば、いろんなタイプの先生と出会ってきた。おっかなかったり、ちょっと変わっていたり、うっとうしかったり・・・。
あの頃はすごく大人に思えたのに、気づけばあの頃の先生より、今の自分が年上だったりするのだ。
当時は分からなかった先生たちの言葉が、今なら不思議と分かるような気がする・・・。
先生との思い出には、いや応なしに本当に若かった頃の過去の思い出を引き出してくれる力がある。昔のことが、まるで昨日のことのように・・・。

『 気をつけ、礼。 (重松 清/著) 新潮社 』

どこにでもひとつやふたつはある先生と生徒の思い出を、切なく、ほろ苦く、やさしく描いた短編集。どの物語も押さえられていた思いが最後にあふれ出て、読む者の胸を激しく打つ。先生と生徒の織りなす綾と深みがある。
読み進めながら、何度も物語の生徒の年頃を思い出そうとしたのは、その子たちの背景や心情が、はたして等身大の生徒としてふさわしいものかという疑念を感じたからだった。
小説にもかかわらず、そこまでリアリティーを求めてしまうのは、随所で炸裂するむき出しの感情が現実的な生々しさを伴っている証拠といえよう。

ひとり一人の感覚や心情の変化、置かれた立場の違いからくる見解の相違などが細部までリアルに書き分けられ、どの人物にも圧倒的な説得力があるので、気持ちを寄り添わせて、ぐいぐい読み進めることができる。
ありきたりの日常の中、先生と生徒の関係を軸に、視点を自在に変えて練り上げられていく世界は、著者の世代ならではの、青春をひきずることのできる最後の世代の群像劇である。

どれも捨てがたい物語で、人間を見つめる目の澄んだ優しさ、切なさ、悲しさが際立っている。
中でも秀逸なのは、「白髪のニール」と「ドロップスは神さまの涙」、それと「泣くな赤鬼」だろうか。
大人が泣ける、先生と生徒の味のある物語たち。まさに粒選りの作品集。おすすめです。

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 気をつけ、礼。 /  重松 清


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