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社長のコラム しゃコラ



社長のコラム、通称“しゃコラ”
稀有なジャーナリスト 2008/11/09

ジャーナリストの筑紫哲也さんが11月7日、肺がんのため死去した。
筑紫さんは、日本を代表するジャーナリストの先駆者のひとりだ。
日々報じられる一片の無機的なニュースの向こうには、必ず生身の人間がうごめいている。半世紀もの間、筑紫さんは第一線でそれを鮮やかに伝えてくれた。
突然の訃報を聞いて、さて、誰がそのポジションを継げるのかと、この国のジャーナリストを見渡したが、見つからない。

今の世の中には、まるで考えることを放棄したかのような、「分かりやすい言葉」が氾濫している。「分からなければ・・・」という強迫観念が、言葉に限らず、思想や政治やジャーナリズムの世界にもまん延している。その結果、分かりやすい安易な答えや安直な解釈がはびこることになる。
しかし、筑紫哲也というジャーナリストは、それに逆行しようとする稀有なジャーナリストであったと思う。安易な答えや安直な解釈を徹底的に拒絶し、人間にとって不可解であるが必要な“言葉”という原点にひたすらこだわり続けた・・・。「分かる」ことがもてはやされる現代にあって、謎を謎のままに伝える筑紫さんは、きわめて貴重なジャーナリストであった。

確か東京でサラリーマンをやっていた平成4年か5年頃だったと思うが、仕事で一度お会いしたことがある。
その時交わした会話の中で「広島県人でもないのに、なぜ広島カープが好きなのですか?」と質問したのを覚えている。それに対して、「広島県人ではない私が好きになってはいけませんか?」と逆に質問されてしまった・・・。

体験や記憶について深く考え、ち密に分析するがゆえに、安易な答えや安直な解釈を虚偽として退け、その思考の軌跡を言語化しようとする。ここに筑紫哲也というジャーナリストの原点があるような気がする。
筑紫さんは私の父親と同世代。それだけに、もうちょっと時間とエネルギーを与えてあげてほしかった。番組で肺がんを告白し、闘病を続ける稀有なジャーナリストの姿が浮かびあがろうとしていただけに、残念でならない。

心よりご冥福をお祈りしたいます。


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