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社長のコラム しゃコラ



社長のコラム、通称“しゃコラ”
ホノカアボーイ 2009/03/14

最近映画を見ていても途中で眠ってしまうことがよくある。たとえば、なかなかテンポよくストーリーが展開しなくてイライラするホラー映画だったり、逆に悲劇やドタバタを矢継ぎ早に盛り込まれて話についていけなかったりするアドベンチャー映画。あるいは、「大切なのは愛だよね」などという結論をとにかく出したがっているようにしか思えない、せっかちな恋愛映画など・・・。
そんな映画だったらもう即効で爆睡です。ヨダレだって気にしません。

実は先日、メーカーさんから映画の試写会の招待を受け、それほど期待もせず(スミマセン!)観賞しました。もしつまらない映画だったら、途中で眠気がきてしまうことも覚悟して見たのですが、ユッタリとした展開にもかかわらず、意外なことに見入ってしまった・・・。

『 ホノカアボーイ (honokaa boy) 』

これがもう、なんというか、ちょっぴり‘切ない’映画なのである。
「どうして僕たちは何かを失って、大人になるのだろう」
「こんな毎日の繰り返しに、いったいどんな意味があるというのだろう」
この映画には、誰もが一度は抱く、こんな当り前の疑問がいっぱい詰まっていた・・・。

ハワイ島の北にある浜辺の小さな町、ホノカア。ここでは‘月の虹(ムーンボー)’がかかる時、見た者の願いが叶うという・・・。そんな伝説と美しいハワイの風景と共に、物語はのんびりと進んでいく。
当り前のように繰り返される日常の中で、自分の居場所がわからなくなる。今この瞬間を必死で体当たりで生きたいだけなのに、現実はそうはさせてくれない。
ホノカアに居ついた不器用な主人公のレオが抱く不安の根底には、間違いなく「閉塞感からの逃亡」がある。日本でのありふれた日常や世間との関係に時間を奪われている自分の向こう側の世界に、刺激的で楽しそうなことが起こっているんじゃないかと期待してしまう・・・。でも、現実からは逃げようとしても誰も逃げることなどできないのだ。
何者でもない自分という存在を抱え、憤り、躍起になり、傷つき、涙を流しながら、それでも見えない先を求める。
そして不思議な時を過ごした後には、やがて、静かに迎える別れのシーンがやってくる・・・。
自分の存在を見失いかけていた青年が、風変わりだけど優しい人たちやハワイ島の穏やかな自然の中で、自分自身を取り戻していくストーリーだ。

映像も淡く、やさしい色彩で実に美しい。海、空、町並みの細部に至るまで丹念に絵づくりされている感じ。登場人物たちの会話も、ことさらに強調することなく、自然で微笑ましい。普通のことを丁寧に描く。そして、何より、かけがえのない日々に温もりを与えてくれた‘ごはん’が、おいしそうに描かれている。
おそらくこの映画は、吉田玲雄の原作をそのまま映像化したのではなく、日常の風景の中に原作を置き、静かに人々を見守ろうとする演出なのだろう。
シンプルだけど、それでいい・・・。
特別な情熱や勇気など必要ない。困惑し、逃げてしまいたくなりながら、現実に踏みとどまろうとする生きる力と、生きている実感を再確認する。
この映画を見ると、日常を生きる人々の営みの温かさがじわ〜っと伝わってくる。ほろ苦くも切ない、静かな余韻を残す映画だ。


PS.東洋水産さんペアチケットありがとうございました。ちゃんとコラム書いときましたよ・・・。

画像

「ホノカアボーイ(honokaa boy)」全国東宝系ロードショー


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