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社長のコラム、通称“しゃコラ”
カップヌードルをぶっつぶせ! 2010/01/23

『カップヌードルをぶっつぶせ!/安藤宏基(日清食品ホールディングスCEO)』

日清食品さんから頂いた本書を前に、自分なりに賭けをしてみた。タイトルからしてちょっと乱暴だが、読み終えてからカップヌードルを食べたくなるかどうか。おろしろかったら、久しぶりに食べてみようかと・・・。

日本を代表する食品メーカーとして知られる日清食品。その日清食品の二代目社長 安藤宏基氏が始めて綴った自叙伝。サブタイトルの《創業者を激怒させた二代目社長のマーケティング流儀》にあるように、本書はまさにスリリングな経営記録である。
「私に言わせれば、創業者とは普通の人間ではない。異能の人である。」
この言葉にもあるように、創業者の父との対立点を浮かび上がらせる論点は、創業者の直系として生まれた者の宿命とはいえ、刺激的で説得力がある。

著者は、創業者の進めたワンマン経営から、社員自らが参画して運営するシステム経営にシフトさせることが、会社の未来を切り開く力になると確信する。
そして、その未来を切り開く力とは、薄っぺらな世渡り上手などではなく、仕事(会社)の運命を決めるような決定的情報を入手するための、人とマーケティングを使う力である。本書は主体性としなやかさを兼ね備えた、実行力のある組織を目指し、その実現を追求している経営者の思索の記録といっていいドキュメントだ。だか常に著者の頭の片隅にあるのは、乗り越えなければならない創業者である父の面影のようだ。

世代の違う親と子が仕事を巡って激しいバトルを繰り広げる。どこにでもありそうなことだが、父親の急死を受けて後を継ぐこととなった私からすると、著者がうらやましくてたまらない。私は父親といっしょに仕事をしたことがないので、どうしてもいまひとつ模範とすべき手本がない。また、後継者として生まれたのは、私に選択権があったわけではないという複雑な思いもどこかにある。
だが、ハッキリしていることは、先代社長と後継者という関係は、父親と息子という側面とリンクし、なんとも不思議な関係が出来上がるものなのだ。これは、男同士のメンツといった意識の問題で、生きていようが死んでいようが関係ない。

また、創業の原点に回帰しつつ、過去に縛られずに大胆に改革を進める著者の成功事例だけでなく、失敗談や反省点も素直に述べる、そんな姿勢も本書の魅力のひとつだ。モノづくりへの愛と誇りを込めて熱く語られる著者の、他人にとってはどうでもいいような「こだわり」に、誰もが自然と引きつけられていくことだろう。
日清食品の社員たちは、この本に克明に描かれた数々のエピソードから何を感じるのだろうか・・・、また、ライバルメーカーの人たちが読んだ場合、どんな嫉妬を抱くのだろう・・・、ふと、そんな疑問が頭をかすめた。

今や国内だけに留まらず世界中で食べられているカップラーメン。その頂点に立ち業界をリードし続ける日清食品。しかし、どんなに世界的な食品メーカーとしての地位を確固たるものにしても、二代目社長の目は常に「創業者の言葉」に向けられている。それが、売る側の理論ばかりが優先される消費社会を批判し、どんなに自社ブランドがもてはやされる時代になっても変わらない信念をもって我が道を行く、日清食品の魅力の源なのだろう。本書に描かれたものは、決して過去ではなく「今なお続いているプロセス」なのである。

読み終えて、久しぶりに食べるカップヌードルの‘あの味’が、心地よかった。

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『カップヌードルをぶっつぶせ!/安藤宏基』


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