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社長のコラム しゃコラ



社長のコラム、通称“しゃコラ”
この世界の片隅に 2011/08/06

『 この世界の片隅に 』 / こうの史代 (双葉社)

私は、物心ついてからというもの、どうも漫画とかアニメといったモノが苦手だ。宮崎作品、スタジオジブリなど、ほとんど興味がない。そんな私にこの漫画を読むきっかけを与えてくれたのは、‘エキストラ出演’というサプライズだった。
この漫画が、スペシャルドラマ化されることとなり、呉市内でロケが行われたのだ。会社のそばで撮影が行われたため呉市役所観光振興課(呉地域フィルムコミッション)より、エキストラとしての出演依頼があり、社員、市場関係者といっしょにボランティア参加した次第。
ひょんな縁から、読むことになったこの作品。呉市を舞台としているからか、想像してたより最後まですんなりと読めた。

主人公は、若くして呉に嫁いできた‘北條すず’という女性。そのすずを通して戦時下の呉市内の庶民生活をリアルに朗らかに描いている。
過去を舞台にした物語は、ときに現在の物語以上に、現代社会の実情を映し出す作用がある。と同時に、登場人物たちの真っ直ぐな生き方や時代に翻弄される様は、私たち現代人に何かを気づかせ、勇気をも与えてくれる。けっしてありがちな反戦物語ではない。運命を切り開く人間像とアイデンティティーの変遷を、徹底してリアルに描いた物語だ。焼け跡さえ知らない、戦後生まれの作者でも、戦争の本質を言い当ててるから魅力的で胸に迫るものを感じることができる。

日常の光景を切り取ったような、大胆な構図のイラストも魅力のひとつだ。
どんな状況の中でも作者は、あの戦争の深部を見ようとする。それはニッポンが確かに通過し、残してきた矛盾や悲しみを、作者の手でつかみ取ろうとする姿勢である。敗戦国の立場ではなく、作家として、つまりそこで生きる個々の人間の側に立つ。登場人物の過去にまつわるストーリーもあり、好奇心をくすぐられ、自然とページをめくる速度は上がっていく。戦争という過酷な状況下でも、愛情あふれる色彩で描かれた心温まる夫婦愛と家族の絆。
だが、読み進むほど戦争の悲惨さや惨たらしさが容赦なく浮き彫りとなっていく。

「歪んどる (20年7月)」

戦況が日増しに悪化する中、すずのこの一言にほとばしる命の瞬間。引き裂かれた家族の再生の困難さと断念の過酷さを鋭くとらえていて、まさにこの言葉がすずの心を捻じ曲げる。自分の居場所と自分自身に生じた歪みに苦しむすず。
そして、他を虐げ、自らも虐げられた国の敗戦。

「この国から正義が飛び去ってゆく (20年8月)」

義妹と右手を失っても生きている自分に苛立ち、敗戦を受け入れることができないすずの異色のこの場面は、見事なまでに美しい。この国の正体を知り、それでもなお生きていかなければならない覚悟を胸に抱きながらも、戦争で人間としての苦悩、純粋な生死の苦悩に真っ向から向き合うすず。物語はやがてクライマックスを迎え、すずは戦争によって死んでいった愛する人たちの記憶の器となって生きていこうと心に決める。
変わっていく街、大切な家族、積み重なっていく小さな幸せ、そして、大切な恋の思い出。
すずがこの世界の片隅に見つけた居場所とは・・・。

この物語に登場する人々は、‘自分の居場所’を素朴に一生懸命生きる、まさにそんな存在といっていい。
温かな息づかいの登場人物が多いけれど、しかしあくまでも冷静にそれを見据える。リアルであるがゆえに痛切。痛切であるがゆえに忘れがたき現代に通ずる家族のピュアな物語である。


『 この世界の片隅に (全3巻) 』

あ と が き


〜 終戦記念ドラマスペシャル 「この世界の片隅に」
    8月5日(金)日本テレビ系列 21時00分から23時24分 〜
出演:北川景子,小出恵介,優香,速水もこみち,りょう,芦田愛菜,篠田三郎,市毛良枝


さて、昨日のオンエアを拝見しました。ドラマは原作の誠実さがそのまま忠実に再現された内容だったと思います。
でもドラマの出来がどうというより、自分のエキストラ出演のシーンがどうなっているのか、そこばかり気になって、テレビの前で正座して待っていたぐらいです。

そして、今か今かと待っていると、ついにその時がやってきたの・で・す・が・・・。

「えっ・・・!」
「・・・」
「ちょっと待った???   あ・れ・だ・け・・・?」
「・・・」
「マ・マ・マジかよ・・・・!」

あんだけ宣伝した私の立場はどうなる・・・!?
暑い中、衣装着込んで撮影頑張ったじゃない! それなのに・・・(涙)

「あれはないぜぇ〜、日本テレビ!(笑)」


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