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社長のコラム しゃコラ



社長のコラム、通称“しゃコラ”
祭り 2012/11/19

うちの会社がある呉市地方卸売市場の敷地内には、小さいけど恵比寿神社がある。だが、公共の施設の中に特定の宗教を指す神社なるモノがあることは、本来ならNGらしい。開設者の呉市としても頭の痛いところだ。しかし、市場移転のドサクサの中、神社も一緒に移転してきたもんだから、今となってはどうしようもない。全国の市場の中でもまれな事例で、こうやってカミングアウトすることすら、実はマズイことなのかも・・・。

その恵比寿神社大祭が終了すると、その年の秋祭りの季節が終わる。今年も例年通り、週末ごとに市内各地で伝統的な秋祭りが行われた。ひと月もの間、あちこちで勇ましい笛や太鼓の音を耳にし、たくさんの大きなのぼりを目にした。たくさんの見物客や、激しくお神輿をかつぐ様子や、威勢のいい音に色とりどりの屋台。最近では各地のB級グルメもいろいろ味わえる。賑やかで美味しくて、なんだか次第に元気になってくる。そんな祭りが私は大好きだ。まさに地元ならではの風物詩。

とにかく子供のころから祭りと聞けば、妙にワクワクしていた。祭りの雰囲気にいつも神秘と不思議を感じていたからだと思う。日本各地には、楽しくて不思議で、賑やかで神秘的な祭事・行事がたくさんある。そんな各地の祭りを紹介する雑誌やガイドブックはたくさんあっても、その大半は観光用だ。祭りを見るのには役立つけれど、その祭りの向こう側にあるモノまでは見せてくれない。

面白いことに、どこの祭りもみんな、むかしどこかで見たような懐かしさを感じさせてくれる。遠い昔から今日まで引き継がれてきた大切な教え。土の匂いがプンプンするような、祭りの熱気を感じていると、その向こう側から、私たち日本人のご先祖さんが、ぞろぞろやってくるかような気分になるから不思議だ。

そして、ほとんどの祭りには必要不可欠な存在の「異形の者」が現れる。彼らは、私たちと異界とを結ぶメディアである。異界の扉をあけるには、こういう異形の者たちが必要なのかもしれない。
それで思い出したが、近頃各地で盛んな「よさこい祭り」でも、出演者たちはみな派手で異様なナリをして踊っている。あれはきっと自らを、異形の者に仕立てるための自己演出で、祭りに溶け込もうとする参加者の強い意思の表れなのだろう。

呉地方の秋祭りには、欠かせない存在の「ヤブ」と呼ばれる‘鬼’がいる。ヤブは、呉市街地の他に焼山、伏原、阿賀、音戸地区の一部の神社にしか存在せず、広島県人でも知らない方も多い大変マイナーでローカルな存在。神様の警護と道案内の役割を担う、まさに異形の者。
ヤブのどこが好きかって、やっぱその怖そうな風貌なのにどこか憎めないところではないかと思う。子供たちはみんな泣き叫ぶけど、周囲の大人は笑って見ている。

『ヤブ』と呼ばれる鬼

こんな地元の伝統的な祭りを、私たちはもっと大切にしたいものだ。古いものの中にこそ大切なものがきっとある。だが、大切にするということは、防腐剤を入れて保存するということではない。祭りの中で地域の風習を確認し、ご先祖さんたちと一緒に遊ぶということだ。
今のような息苦しい酸欠の時代にこそ、こういう祭りの持つ意味を再発見する時かもしれない。こうした祭りが人々から忘れられ、地域から失われてしまったら、本当に取り返しがつかないことになる。それこそ、あとの祭りである。


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